形態は機能に従う

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形態は機能に従う

「形態は機能に従う(Form Follows Function)」という言葉はデザインをする際、またデザインを評価する際に用いられる。この言葉の本来の意味と、現代における適切な扱い方を探る。

「形態は機能に従う」の歴史と周辺

「形態は機能に従う」という言葉は、19世紀の生物学から生まれたと言われている。生物が生涯の間に身につけた形質(獲得形質)が子孫に伝わるとした、「用不用説」がその源流とされる。

17世紀、カルロ・ロドリ(フランチェスコ会修道士・イタリア)らは素朴合理主義的建築理論を提唱した。ロドリは「材料の本質を最も活かすような形態が望ましい」と考えた。当時、この理論を実践することはできなかったが、近代以降の新しい材料(鉄やコンクリートなど)を扱う際に生かされた。

19世紀にホレーショ・グリーノウ(彫刻家・アメリカ)は「美は機能の約束である」と考え、後の「機能主義」の登場を予見した。

オットー・ワーグナー(建築家・オーストリア)は著書「近代建築」の中で、近代生活にふさわしい合理的で機能的な建築観を記した。また「芸術は必要にのみ従う」と主張した。

ルイス・ヘンリー・サリヴァン(建築家・アメリカ)はシカゴ派を代表する建築家で、フランク・ロイド・ライト(建築家・アメリカ)の師の一人としても知られる。シカゴ派は鉄骨造の高層建築に代表される建築傾向である。サリヴァンは鉄骨構造により、それまでの石造建築における構造的(物理的)、または形式的(歴史的)な制約がなくなり、建築デザインに変化が生じることを予見した。サリヴァンによって「形態は機能に従う」というフレーズが造られた。

20世紀に入り、ドイツのバウハウスでも同様の方針で美術、建築の教育が行われた。またバウハウスの運営期間(1919~1933)と同時期に活躍したフランク・ロイド・ライトも機能的設計をモットーとする一人である。

アドルフ・ロース(建築家・オーストリア)はワーグナーの主張をさらに進めた。これは無装飾主義と呼ばれる。1930年代後半には「機能主義」は「無装飾主義」と同類の扱いをされるようになり、「機能主義」という言葉に批判的な意味合いが込められる時期もあった。

現代、「形態は機能に従う」の本来の意味や当時の建築物が再評価され、芸術やデザインにとどまらず、プログラミングやサービスなど、多くの分野で有効な基準として、また思考のベースとして利用されている。

「形態は機能に従う」の2つの用法

デザインを描写するための用法

描写する対象の美しさは、機能の純粋さと装飾性の無さに因るものだ、という用い方。機能を基準としたデザインは他のデザイン方法に比べて、客観的な美的価値観を与えることができる。

デザインをするための用法

デザインをする際には、デザインの美しさよりも、デザインの機能を考えることを優先すべきだ、という用い方。デザインの省略や機能の削除、機能の交換を考えるよりも、機能を満たすためにはデザインのどの面が重要かを考えるべきである。

cf.Design Rule Index 第2版 デザイン、新・25+100の法則

様々な観点で「形態は機能に従う」を考える

ビジネスの観点から

機能をベースに作り上げたデザインは、複雑な装飾や形状が与えられていない事が多いため、大量生産に向いているとされる。また「何故このデザインになったのか」を説明しやすいため、売りやすく、広告宣伝しやすいとも考えられる。

ユーザビリティの観点から

機能優先でデザインすると、アフォーダンスに優れた製品やサービスを作ることができる。形態から機能や使い方を推測できることはユーザビリティを考える上で重要なポイントである。一方、機能を追求してデザインした結果、既存のものと大きく異なるデザインになり、かえって使い勝手が悪くなる場合がある。古いデザインから新しいデザインへ変更する際は十分な注意が必要である。

cf.デザインとユーザビリティ

美の観点から

「あるデザインに至る理由」はいくつかあり、「機能」を優先的な理由にする必要がない場合もある。「黄金比」や「シンメトリー」などのように、心地良いとされるルールに基づいてなされたデザインは人の感情を動かす。一方、「形態は機能に従う」ことだけを考えてなされたデザインは、時代や流行を超えて評価される可能性があるものの、深みや面白みにかけることも多い。また商品やサービスに不可欠な「欲求」や「満足感」といった、人の感情を刺激することができない。

機能と美の融合

前述のように「機能」と「美(形態)」、どちらにポイントを置くべきかは、果たしたい目的によって変化する。機能を追求することだけが、逆に美を追求することだけが絶対ではない。

また「機能」と「美」は排他的な関係ではない。余分な装飾を排して無駄のない形態や構造を追求した結果、自然にあらわれる美しさを「機能美」という。これは、「機能」と「美」との間でうまくバランスがとれた状態であるともいえる。「機能美」という評価が得られるかどうかは、そのデザインの成功を判断する基準の一つとなり得る。

「形態は機能に従う」をデザインの絶対的な基準にするのではなく、デザインが担ういくつかの役割のうち、どれにどの程度重きをおくかを考えながらデザインするべきである。

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公開日2012年5月5日
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