マンガと情報デザイン・2(コマ、背景、流線と効果線)

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マンガと情報デザイン

「紙の上に描いたキャラクターが生き生きと動き出す」ことは、マンガの大きな魅力である。本来動いていないはずの絵をどのような工夫で動いているように感じさせるのか、そのテクニックを分析した。

コマ

コマは一枚の紙面をいくつもの多角形で区切り、その中に物語の一場面を切り取って描く。描かれた場面を頭の中でつなぎ合わせ、コマとして切り取られなかった、省略された場面を補完することでマンガの物語は展開する。

コマの進行順序

現在日本で出版される漫画雑誌に掲載されるマンガのほとんどが、右上を始点、左下を終点にコマが進行する。海外ではこの限りではない。これは古来からの縦書で描く日本語の読み方に倣ったものと考えられる。ページめくりもこれに従う。一方、上から下へ進行するのは各国で共通している。

コマの役割

天地の表現
特に説明がない限り、コマの上が天、下が地を表すことが多い。
動きの表現
マンガのコマは映画フィルムの一コマに相当すると考えることができる。パラパラ漫画のように連続した動きをコマに配置させると、動きを表現することができる。また、不規則なコマ割りを使い、スピード感や動きを表現する方法もある。
視点の切り替え
マンガの中では常に視点が切り替わっている。コマ毎に視点が切り替わることは多い。また同時にたくさんの視点を表現する事で、対象の立体感や存在感を強調することもできる。
視線の誘導
コマの進行方向に合わせて、登場人物が移動するよう描かれていることが多い。これによりスムーズに視線を誘導することができる。
時間や場面の分節
基本的に、コマはそれぞれ違う時間を描いている。また何も描かれていないコマ(捨てゴマ)を配置することで、時間経過や場面転換を表現することができる。
心理表現
コマの前後に余白を取ることで、心理表現をすることができる。
心理誘導
物語の盛り上がりを演出することができる。めくりゴマ(次のページに移る直前のコマ)と見せゴマ(めくりゴマの次のコマ)はそれぞれ重要なコマとされる。また、コマの大きさや配置で読者の心理状態をコントロールすることができる。
コマ

コマの省略

登場人物の動きや状況の変化をすべて描くと、マンガは急にその軽やかさを失う。本来存在するはずのコマが省略されることで、物語の展開に適度な速度を与えることができる。しかし省略されるコマはかなり吟味しなければ、物語の意図が読者に伝わらなくなる。この省略の程度は読者の身に着けているマンガのリテラシーに因るところが多い。幼児向け、子供向けのマンガ、また複雑な物語の序盤などでは省略の度合いを減らし、読者に十分な情報を与える必要がある。

コマのレイヤー構造、コマのフレームの崩壊

マンガ技術の成熟した現代のマンガでは、コマやページが複数のレイヤー(層)で構成されることが多い。複数のコマを重ねることで、より豊かな表現が可能となる。またコマを囲むフレームは必須ではなくなっており、必要に応じてフレームのないコマを用いることもある。

背景

背景は物語の状況を説明することができる数少ない要素である。黎明期のマンガでは背景が固定された中で登場人物が動く、舞台のような演出がなされた。次第に登場人物が中心に描かれ、背景が動くことで動きや移動を表現するようになり、現代では背景も登場人物も視点がどんどん切り替わり、ダイナミックな画面構成となっている。

背景の役割

場所の説明
登場人物の背後に描かれる背景で、物語の舞台を説明する。また、場面転換時には場所を代表するカットを差し込む。
季節や時間の説明
季節のように大きな時間の変化だけではなく、一日のうちの時間の変化も背景で表示する必要がある。場所同様、場面転換時には時間がわかるカットを差し込む。
心理状態の表現
背景が担う役割のうち、最もマンガ的なものが心理状態の表現である。登場人物の表情と組み合わせることで、多彩な感情表現が可能となる。
背景

マンガの背景に要求される要件

簡略化と省略
背景が複雑すぎると登場人物に集中することができない。背景はある程度簡略化する(状況によっては省略する)必要がある。
正確さ
登場人物との縮尺の一致や立体表現の正確さが必要である。
視点のバリエーション
登場人物との距離や角度を変え、多彩な視点で物語を描くと良い。

流線と効果線

「流線」や「効果線」はマンガ特有の補助線の一種で、人や物の動きなどを表現する。

流線(動線とも)
人物や物体が動いた軌跡。残像現象の表現として生まれた。動きやスピードを表現できる。
効果線(集中線とも)
スピード感だけでなく、強調の役割も担う。
流線と効果線

形喩

マンガ研究家である夏目房之介氏は、著書「マンガはなぜ面白いのか その表現と文法」の中で「形喩」という言葉を使っている。これは流線や集中線を含む、マンガ特有の記号の総称である。夏目氏は形喩を「抽象化され、独立した記号としてはたらくもの」と定義している。形喩を使うと、次のような事柄を表現することができる。

  • 動き
  • 強調
  • 感情
  • 状態
形喩

流線や効果線に代表される形喩は、マンガには欠くことができない表現手法である。他のメディアに引用されることも多く、マンガを象徴する表現であるともいえる。

まとめ

  • マンガのコマは単純に場面を切り取るだけではなく、様々な役割がある
  • マンガの背景も同様に、場所や時間の表現以外の役割がある
  • 「形喩」はマンガには必須の表現手法である。

参考

記事のデータ

公開日2012年11月21日
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