マンガと情報デザイン・3(質感の表現)

IDIA.JP > レポート > マンガと情報デザイン・3(質感の表現)
マンガと情報デザイン

「マンガは紙とペンさえあれば描くことができる」と言われる。これはマンガの手軽さと同時に、ペンだけで全てを表現しなくてはならないという、マンガの表現手法の制限も意味している。マンガが「単色印刷」という課題をどのように克服して、豊かな表現を実現してきたかを分析した。

マンガに求められる表現上の要件

シンプルな描線
日本では、多くのマンガが週刊誌などの「読み捨てられる雑誌」での掲載を初出としており、印刷される紙の質が決して良いとはいえない。粗悪な紙でも絵が潰れないないよう、単純化したシンプルな線での描画が必要である。
モノクローム印刷
単色印刷であるため、デッサンと同等かそれ以上に「質感」の表現の工夫が必要である。

描線を単純化するテクニック

デフォルメ
描く対象を変形させて、強調したい箇所を明らかにする。「デフォルメ」という言葉には「簡略化」の意味はないが、マンガでは「変形を伴う簡略化」を指す用語として用いられることが多い。デフォルメによって頭を大きく描くと、表情の表現がしやすくなるなど、変形がもたらす効果も大きい。
省略
眼の単純化や鼻の省略など、マンガっぽい絵柄は省略によって生まれる。
ペンの使い分け
つけペンや製図ペンのように細く濃く描けるものから、サインペンのように太く描けるものまで、太さや濃さの違うペンを使い分けることで単純な線ながら多彩な表現が可能となる。

豊かな表現を実現するテクニック

アミ
斜線の組み合わせを「アミ」という。アミにより、様々な質感の表現が可能である。単純な交差による「カケアミ」と、縄目のような「ナワアミ」が代表的。
スクリーントーン
あらかじめ模様を印刷した「スクリーントーン」を使用することで、模様や質感を手軽に表現する事ができる。
ベタ
黒で塗りつぶす技法。黒い色の表現だけではなく、硬質な金属の表面を表したり、登場人物の心理状態などを表現することもある。
ベタフラッシュ
黒背景の上に白色で描く技法。光や爆発などを表現できる。
豊かな表現を実現するテクニック

色と質感の表現方法

色の表現方法

モノクローム印刷を前提としたマンガでは、色は一画面の中で「相対的」に表現する。ベタに始まり、アミやスクリーントーンを組み合わせたものを経て、ホワイト(白一色)まで、多段階で表現できる。また、読者が持っているモノと色との組み合わせ(海は青い、植物は緑、トマトは赤いなど)の情報を頼りに、形から色の情報を補うこともできる。

色の表現方法

質感の表現方法

質感は、透明度や影、映り込みなど複数の要素を組み合わせて表現する。

表面の状態
線や影を描くことで凹凸を表現する。
光と影
影はベタやアミ、スクリーントーンで表現できる。光は影を描くことで間接的に表現する。
蛍光、蓄光
周囲を暗くして、相対的な明るさの違いで表現する。
硬さ、重さ
硬さや重さは金属的な反射を描くことで、またモノが触れても変形しないことで表す。
柔らかさ、軽さ
柔らかさや軽さはシワなどを描くことで、またモノが触れると変形することで表す。
液体、気体、ガラス
透過した背景の歪みや、移動した時の光の反射などで表現する。
つや
周囲の映り込みや光の反射で表現する。
あつさ、つめたさ
周囲の景色の歪みや、まわりのモノの状態の変化で表現する。
経年変化
汚れやサビなどを描き込む。モノの素材や使われ方を想起させることができる。

目には見えない物や、白黒では表しにくいものは、その存在を示す間接的な情報を描いて表現する。そこには誇張やイメージに基づく表現も含まれる。

まとめ

  • 単色印刷に対応するためにマンガ独自の技法が発展した
  • 色は画面中で相対的に表現し、形から色の情報を補うこともある
  • 質感は複数の要素を組み合わせて表現する
  • 描くことが難しいものは間接的な情報を提示して代替する

参考

記事のデータ

公開日2012年11月28日
カテゴリー
タグ
関連する記事

記事を共有する