見えない部分のデザイン

IDIA.JP > レポート > 見えない部分のデザイン
IDIA.JP

男性の多くは鏡を正面からしか見ないが、女性は必ず後ろ姿を確認する。また下着や靴下にまでこだわりがあるのは、男性よりも女性のほうである。見えない部分、見せない部分のデザインについて考察した。

「見えない部分のデザイン」の例

アップルの製品

アップルの製品

その薄さと高いパフォーマンスで人気を集める「MacBook Air」。手にした人がまず驚くのはその薄さと軽さであるが、使用したり持ち運んだりして気がつくのは「底」の部分のデザインである。他のパーツと同様、丁寧にデザインされており、これにより他の薄型ノートPCとは一線を画す完成度となっている。

またAppleのノートブックでは、ディスプレイ裏側の林檎マークが光る仕様になっている。使用中、自分からは見ることができない部分ではあるが、ほかの人から見られる前提でデザインされており、使用時に正位置となるよう林檎マークを配している。

Appleを代表する製品である「iPod」では、初代iPodから現在のiPod touchに至るまで、ミラー仕上げのステンレス製ケースを背面に採用している。ステンレスのケースはキズがつきやすく、加工にも手間がかかるが、その見た目の美しさを優先している。

Appleの一体型デスクトップ「iMac」は、背面を継ぎ目のない一枚のアルミニウムで覆っている。インターフェースも洗練されており、背面からは電源ケーブルが一本出ているだけ、というすっきりとしたデザインに仕上げている。

腕時計

腕時計

腕時計は時間をみるための道具であるが、同時にアクセサリーとしての役割を担っている。文字盤やケースには時計職人のみならず宝石職人の高度な技術が惜しみなく注ぎ込まれている。

ところで腕時計は、外装だけではなく、搭載しているムーブメントでもその価値が大きく変動する。腕時計のムーブメントは本来見ることのできない箇所であるにもかかわらず、金めっきが施されたり、彫金によって装飾がなされたりする事がある。

自動車

自動車

「若者の自動車離れ」が叫ばれて久しいが、車をみて「かっこいい」と思う気持ちは世代を問わず共通しているようだ。高級スポーツカーの代名詞「ポルシェ」は、正面や横からはもちろん、後ろからみた時のデザインに特徴があり、それは「女性の後姿」に例えられる。

cf.ポルシェ・デザインの魅力

日産「CUBE」は、デザインにうるさい若者をターゲットにした車である。「モノそのもののカタチが魅力的に感じられるデザイン」を目指しており、特に特徴的なのはそのリヤ部分のデザインである。アシンメトリーの形状はひと目でそれと分かり、同時に運転席から見えにくい左後部分の視界を確保することにも成功している。また往年の名車である日産「スカイライン」は、テールランプの丸い形をアイコンとしており、モデルチェンジの際もそのデザインを踏襲し続けた。

腕時計同様、車も高級車であればあるほどエンジン部分のデザインに力を入れる傾向がある。複雑ながら整然と組み込まれたエンジンのデザインは男心をくすぐる。

洋服

洋服の裏地は、着心地の良さや型崩れのしにくさに大きく影響する。また動きに合わせてちらりと見える裏地の模様は、表の生地以上に印象に残る。

下着など肌に直接当たるものでは、生地の重なりや補強のための返し縫いや、品質表示のためのタグが不快なことがある。近年、多くの下着メーカーがタグではなくプリントによる品質表示を採用するようになった。また縫い目がわかりにくい、シームレスな縫製方法も多く用いられている。いずれも説明されないとわからないこともあるが、見えない部分にまでデザインの力が及んでいる良い例である。

デザインに対するこだわり

上辺だけの「デザイン・プロダクト」

旧来の多くのAV機器やPCでは、後ろから複数のケーブルがだらしなく垂れさがっていた。新興国で生産される様々な模倣品は、外観は似せて作っているが「見えない部分」をできる限りデザインしないことでコストを削減している。2012年になって発売されたウルトラブック(薄型高機能のPC)でさえ、底部分のデザインを仕上げていることは稀である。費用や手間とのバランスもあるが、「デザイン・プロダクト」を謳う限りは見えないところまで手抜きのないデザインを施すべきである。

細やかなデザイン

冒頭のように、女性は観察力や洞察力を発揮できる範囲が男性よりも広く、総合的な判断能力が高い傾向がある。デザインにおいても、でき上がったと思った段階で女性の視点でチェックすると、デザインの完成度がさらに向上するだろう。

外観以外の「見えない部分のデザイン」

製品の外観以外でも、情報構造やシステム構造、企画のコンセプトやビジネスの目的など、「見えない部分のデザイン」を感じる場面はたくさんある。これらはいずれも使いやすさやわかりやすさ、メンテナンスのしやすさなどにつながり、ひいてはビジネスの成否や製品、サービスの市場寿命に影響する。

「見えない部分のデザイン」をする理由

ユーザーエクスペリエンスの向上
ビジュアルデザインはそのプロダクトやサービスを使うユーザーの体験を向上させるのに最も効果的な手段の一つではあるが、デザイン上の小さなミスやわずかな手抜きが全体の印象を左右することもある。
高級感の演出
見えない部分までデザインすることで高級感を与え、手間がかかっていることを演出できる。
他との差別化
市場が成熟すると、商品やサービスがあるひとつの方向に収束し、相互間の差がなくなる。ここから一歩抜け出す方法として「見えない部分のデザイン」に注力することの効果は大きい。
機能美
ベース部分で質の高い設計がなされていると、それが表層にあらわれ、美しいデザインとなる。これは一般的なビジュアルデザインとは区別して考えるべきである。
cf.形態は機能に従う

記事のデータ

公開日2012年6月25日
カテゴリー
タグ
関連する記事

記事を共有する