アンカリング

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アンカリングは「認知バイアス」のひとつである。情報認識や意思決定において、既知の、あるいは限定された特定の情報の影響を受ける傾向を指す。アンカーは英語で「錨」の意。新たな情報を認識する際、特定の情報の存在が、新たな情報を特定の情報寄りにつなぎ止める「錨」の役割を果たす。「係留効果」ともいう。

認知バイアスとは

観察者効果の一つ。観察者がすでに持っている情報などが情報の認識に影響を与えることをいう。認知バイアスは、人の判断や意思決定が合理的に行われていない場合があることで示された。直感、先入観、思い込み、偏見などの原因となっている。

cf.ヒューリスティック

様々なアンカリング

その時点で手に入る情報
これまでの知識や経験を基に、新たな情報の性質を推測する
最初の情報
最初に接した情報や、その情報に現れた特徴を極端に重視する
偏った情報
全体を俯瞰することなく、特定の視点のみで情報を判断する

アンカリングの具体例と解説/応用

はじめに手に入れた情報

検索エンジンの検索結果では、上位に表示されるサイトやページの情報のほうが信頼される傾向にある。これは検索エンジンのアルゴリズムに対する信頼性もさることながら、最初に手に入れた情報をアンカーとして、以降の情報を判断するためである。

解説/応用

全く新しい商品やサービスは、他社に先駆けて市場での認知度を高めることができれば、先駆者として信頼感を集め、以降のビジネスの展開を有利に進めることができる。

特定の情報に固執

商品やサービスを選ぶにあたり、本来は価格や性能などを総合的に判断すべきであるが、わかりやすい切り口だけを判断基準にしてしまうことがある。たとえばPCでハードディスクの容量だけを気にしたり、中古車を買う際に走行距離だけを選択基準にしてしまったりする。

解説/応用

業界で後発となる商品やサービスの提供を開始する場合は、その商品やサービスで重要とされる特定の要素の性能を良くしたり、価格を極端に下げたりすることで、先行のものと差別化してシェアの獲得を目指す。

商品やサービスの価格

多くの場合、「希望小売価格」や「参考価格」は実際の販売価格よりも高い。これの差が大きければ大きいほど、利用者が「お得感」を感じ、購買行動を起こす可能性が高まる。逆に、利用者が主導権を握る価格交渉の場面では、本来支払っても良いと思っている金額よりも極端に低い価格を提示して交渉を開始し、本来の希望価格付近での購入を成就させることもある。

解説/応用

根拠のないアンカリングは不信感を招く。市場価値が「10万円」の商品に対して「50万円」の希望小売価格をつけたり、同商品に「1,000円」を提示して価格交渉をすすめることはできない。店頭では「周辺店舗の価格」や「インターネット価格比較サイト」などの客観的な価格情報を基準に、販売価格を決定したり、価格交渉したりするとよい。

直前に得た情報の影響

ある事柄の割合がX%よりも上か下か?という質問ではXの値に応じて得られる答えの傾向が変化する。また、オークションの際、事前に示されたランダムな数字(商品の価格などとは無関係)が、入札額に影響するという実験結果もある。

解説/応用

アンケートや市場調査でも、ある程度は結果をコントロールすることができる。

cf.アンケート成功する販売促進のためのアンケート

飴と鞭

「飴と鞭」や「ツンデレ」のように、前後でベクトルが180度異なる情報を与えると、後者の効果をより高く感じさせることができる。

解説/応用

営業やコンペティション、プレゼンテーションの際には耳当りのよい情報ばかりではなく、本来自分にとって不利な情報を適度に織り込むと、説得力を高めることができる。また商品紹介ではデメリット表示を適切に行うと、店舗や商品に対する信頼感が増す。

たたき台

企画やデザインでは、議論のベースにするためのたたき台を設けることがある。しかし、たたき台がアンカーとなり、それ以上の良案が生まれないこともある。

解説/応用

原案やたたき台を作る際は、必要以上に完成度を高めたものを作らない方が以後の議論は活性化する。どちらかといえば、完成度よりも、その企画やデザインの目的を達成するためのポイントを押さえることを重視するべきである。

アンカリングの注意点

根拠のないアンカリング

前述したように、根拠のないアンカリングは不信感を招く。交渉でアンカーを用いるならば、アンカーは常識的な範囲に収まるよう設定する必要がある。

適切なアンカーの決め方

それでは適切なアンカーはどのように決めればよいのだろうか。たとえば価格交渉では、統計学で用いる「標準偏差」を用いるとよい。標準偏差は「データのばらつき」を示す指標のひとつであるが、「平均値±標準偏差」の範囲に全データの68.27%が、「平均値±標準偏差の2倍」の範囲内に全データの95.45%が分布することが知られている。
これを利用して、いくつかのお店の販売価格を調べ、「平均価格」と「標準偏差」を計算する。この「平均価格」から「標準偏差の2倍から3倍」程度を引いた価格をアンカーにすれば、無謀な要求で価格交渉が決裂してしまう可能性を低くすることができる。

A店での販売価格が168,000円の商品を価格交渉する際
A店B店C店D店E店
販売価格168,000円143,000円180,000円178,000円148,000円

平均価格:163,400円

A店B店C店D店E店
平均価格との差(絶対値)4,600円20,400円16,600円14,600円15,400円

標準偏差:1,205円

平均価格から標準偏差の3倍を引く:163,400円−1,205円×3=159,785円
158,000円程度をアンカーにして価格交渉をスタートし、「平均価格」から「標準偏差の2倍」程度を引いた価格(この場合は160,990円程度)での購入を目指す。

参考

記事のデータ

文責IDIA.JP
公開日2013年7月2日
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