アール・ヌーヴォーとアール・デコ

19世紀末~20世紀初頭に一世を風靡した「アール・ヌーヴォー」と「アール・デコ」は、現代においても人気の高いデザイン様式である。
アール・ヌーヴォーとは
名称の由来
アール・ヌーヴォーは「新しい芸術」の意。美術商サミュエル・ビングが1895年に開店した画廊「アール・ヌーヴォー」に由来する。ビングは日本美術収集家であり、同画廊では日本美術工芸品を扱っていた。
アール・ヌーヴォーの特徴
- 花、草、樹木、昆虫、動物など植物的、有機的なモチーフ
- 曲線模様
- 非対称のレイアウト
- 陰影のない平面的表現
- 木材や石材など旧来の素材と金属やガラスなど新しい素材の融合

建築、美術、工芸、家具、商業印刷などで多く取り入れられた。浮世絵など日本美術の影響を少なからず受けており、後に逆輸入の形で日本でも流行した。デザインの「歴史主義」からの脱却の表れ。1910年代以降はモダンデザインにとって変わられるものの、1960年代にアメリカで再評価される。
アール・ヌーヴォーの作家、作品
- エクトール・ギマール(建築)
- アントニ・ガウディ(建築)
- エミール・ガレ(ガラス工芸)
- ルイス・カムフォート・ティファニー(ガラス工芸)
- ルネ・ラリック(ガラス工芸)
- アルフォンス・ミュシャ(ポスター)
アール・デコとは
名称の由来
1925年にパリで開催された現代装飾・工業美術国際展「L’Exposition international des arts decoratifs et industriels modernes」の略称から。
アール・デコの特徴
- 単純な幾何学的形体
- 直線
- シンメトリー
- 手作り感を押さえたハイテクイメージ
- 抽象化された女性像
- 原色による対比
- プラスティック、ガラス、金属などの素材

建築、ファッション、工芸品、蒸気機関車など。合理的な工業化社会がすすむにつれて、それまでに培われた「装飾性」とこれからの「合理性」とを同時に満たしたデザイン様式。アメリカに波及すると一大ブームとなるも、1930年代半ばには衰退していった。
アール・デコの作家、作品
- ココ・シャネル(ファッション)
- ルネ・ラリック(ガラス工芸)
- タマラ・ド・レンピッカ(絵画)
- レイモン・サヴィニャック(絵画)
- クライスラービル
- ロックフェラーセンター
- エンパイアステートビル
- 東京都庭園美術館
アール・ヌーヴォーとアール・デコ
アール・ヌーヴォー、アール・デコともおよそ100年前の「流行」であるが、現在でも多くの人の心を強くつかんで離さない魅力がある。アール・デコは大量生産を意識したデザイン様式でもあるため、商業デザインにおけるはじめての「流行」であるともいえる。それぞれの様式が持つレトロ感や特徴を上手く取り込むことで、デザインの幅は大きく広がる。
参考
記事のデータ
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公開日 | 2011年9月4日 |
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タグ | ビジュアルデザイン/情報を表現する/用語 |
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