ファミコンから学ぶ情報デザイン・2

ファミコンのヒットゲームには、参考にするべきデザインや表現、情報伝達の方法が数多くみられる。
スーパーマリオブラザーズ
- ゲーム名
- スーパーマリオブラザーズ
- メーカー
- 任天堂
- 発売年
- 1985年
- 国内販売本数
- 681万本
- ゲーム概要
- 最も売れたゲームソフト。家庭用ゲームの認知度を高め、普及に貢献した。「クッパ」率いるカメ一族に侵略された「キノコ王国」と「ピーチ姫」を助けるべく、「マリオ」と「ルイージ」の兄弟が冒険する。
電源投入からゲームスタートまで

子供が遊ぶことを想定したゲームであるにもかかわらず画面に表示されるすべての文字は英語である。コントローラーのスタートボタンを押すと、軽快な音楽と共にゲームが始まる。しかし画面には何の説明もなく、マリオ(主人公)が画面左端に立っているだけである。
ポイント
- 簡単な英語を使用する
- スーパーマリオブラザーズのオープニング画面で使用されている英語のうち、ユーザーが読解しなければならないのは「1 PLAYER GAME」か「2 PLAYER GAME」かである。同様にゲーム中も「WORLD」や「TIME」などが使用されているが、これらは中学生以上はもちろんのこと、英語を勉強したことがない子供であっても意味を推測できる簡単な英語である。Webデザインなどでも英語表記はよく用いられるが、あまり一般的ではない単語は使わず、誰でも理解できる単語を優先的に使用することが望ましい。加えて、日本語を併記できればイメージを崩すこと無くわかりやすさを向上させることができる。
- 例)Webサイトのグローバルメニューで英語を使用する場合は日本語を併記する
- 例)屋号やドメイン名には難しい英単語を使用しない
- cf.伝わりやすい文章を書く
- デモプレー
- 電源投入後しばらく操作しないでいると、コンピューターによるデモプレーが始める。実際のゲームプレーをみて確認することができ、ゲームの概要を紹介したり、新しいゲームに対するハードルを下げたりする役割がある。操作が複雑な機械やソフトウェアでは、操作デモを動画で見せるとユーザーの理解が深まる。
- 例)買い物かごのフローを動画で解説する
- 右を向いたマリオ
- ゲーム開始直後、マリオは右を向いており、同時に右側に大きなスペースを設けている。また左へ向かうと画面はスクロールせず、行き止まりとなっている。これにより「右に向かって移動するゲーム」であることを知らせることができる。可能な操作を視覚的、物理的に制限することで想定外のエラーや不要なストレスを避けることができる。
- 例)その時点で選択できない項目は背景とのコントラストを下げ、目立たなくする
ステージ

マリオは陸、海、空と、様々なステージを冒険する。ステージの構成は次第に複雑になり、冒険を邪魔する敵の数も増えるが、道中、アイテム「キノコ」や「フラワー」などを入手することでマリオはパワーアップし、冒険を楽にすすめることができる。
ポイント
- 明滅する「?」ボックス
- ステージに配置された各種オブジェクトのなかで、最も目立つのが明滅する「?」ボックスである。これをジャンプで突き上げるとコインやマリオがパワーアップするアイテムが登場する。重要なポイント、特にユーザーにとってメリットのあるポイントを目立たせることは、様々なデザインをする上で意識すべき点である。
- 例)セールの広告では開催日や割引率を強調する
- cf.8種類の前注意的な要素
- 固いブロック、柔らかいブロック
- ステージに配置されたブロックは崩せるものと崩せないものがある。崩せるブロックにはレンガ風の模様を付け、崩せないブロックは平坦な表面にすることで「硬さの違い」を視覚的に表現している。
- 例)高機能な携帯は高級な質感に、機能を絞り込んだシンプルな携帯はポップな質感にする
- 海中の表現
- ゲームが進行すると海中のステージが登場する。背景が青一色となり、画面上部には海面が描かれるが、そこが水中であることを示す一番の表現はマリオの口から立ち上る小さな「泡」である。直接的な表現よりも補助的な表現のほうが効果がある場合もある。
- 例)「風」は木の葉やゴミが舞い散る様子で表現する
- 例)白い背景の上にある白いオブジェクトは「影」で表現する
その他

ただ「面白い」だけのゲームでは広く受け入れられない。特に普段ゲームをしない人や初心者に受け入れられるのは「面白さ」に加えて「心地良さ」や「良質な体験」が必要である。
ポイント
- 「無敵状態」の表現
- アイテム「スター」を取得すると、マリオは「無敵」の状態となる。BGMが変化し、キャラクターを明滅させることで「特別な状態」であることを示す。通常よりもランクや価格の高いサービスには、それにふさわしい配色やデザインが必要である。
- 例)年会費や利用額など所持に条件が必要なクレジットカードはゴールドやブラックなど特別な配色にする
- 残り時間が少ないことを表現
- 各ステージにはクリアするための制限時間が設けられており、残り時間が少なくなるとBGMのテンポが早くなる。テンポの早い音楽で時間がないことを表現し、同時にプレーヤーを焦らせることでゲーム性を高める効果もある。アラートなど重要な情報は視覚だけでなく聴覚にも訴えかけて注意を促す。
- 例)デジタルデバイスで発生する重要なアラートは表示と同時に警告音を鳴らす
- ルイージの服の色
- スーパーマリオブラザーズでは「2 PLAYER GAME」であっても同時にプレーすることができない。ミスしたり制限時間に達することで交互にプレーしていくが、プレーヤーの違いを服の色の違いで表現し、誰がプレーする順番なのかを明示する。形状が同じであっても「色」を変えることで違う意味を与えることができる。
- 例)敵キャラクターの色を変化させることで強さの違いを表現する
参考
記事のデータ
文責 | |
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公開日 | 2011年8月6日 |
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タグ | ビジュアルデザイン/フィードバック/ユーザビリティ/ユーザーエクスペリエンス/実践例/情報を伝える/情報を表現する/意図した通りに伝える/技術と手法 |
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