情報技術が力を持つ社会

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現在、情報技術が社会に何らかの影響を与える、ということについて異論を唱える人はいないが、過去には情報技術と社会(特に生産性について)との関係性が明らかにされていない時期もあった。情報技術が社会に影響を及ぼすようになった過程から、情報技術が影響を与え得る社会環境について考える。

情報技術(IT)とは

情報技術(IT)とは、情報の収集、加工、伝達、保管、共有などの工学的、社会的な応用技術の総称である。ITには「これまでにもあったサービスを効率化(または発展)するもの」と「これまでは存在しなかったサービスを可能にするもの」とに大別することができる。

情報社会とは

村井純は「情報社会学概論」で

情報社会とは、デジタル表現された知と情報、すなわち、デジタル情報が社会の礎をなす社会のことをいう。デジタル情報とは、基本的に人間の知を連続量(アナログ)ではなく離散的整数値(デジタル)で表したものである。情報社会そのものが、デジタル情報、デジタル情報ネットワーク、そして、デジタル情報処理技術の基板により成立している。

とまとめている。

ITがもたらしたライフスタイルの変化

ネットワーキング
電子メール、テレビ電話、SNS、ブログ、twitterなど低コストで高速、双方向性のあるネットワーク
在宅取引
オンラインバンク、ネットショップなどそれまでになかった取引形態
双方向メディア
動画投稿サイト、ビデオオンデマンドなど
情報検索
データベースの利用が大衆化
在宅勤務
労働環境、労働時間が社会的なものから個人的なものに

ITの冷遇期

1990年代前半までは、ITが社会の生産性に与える影響は多くの研究者が懐疑的であった。ロバート・ソロー(アメリカの経済学者)も「生産性の統計の中『以外』では、いかなる場所においてもコンピューター時代の到来を目にすることができるだろう」と述べている。

ITの影響が顕在化しにくかった理由

当時、ITが生産性に影響を与えることが分かりにくかったのは何故か。「情報って何だろう」では次のように説明している。

さて、なぜOA(オフィスオートメーション)は成功しなかったのでしょうか。実はその理由は非常に簡単です。人間がオフィスでやっていることは、機会が簡単に真似したり代行したりすることができないような、複雑なことだったからです。特に事務の現場には、コンピューターができるような単純な作業はそれほどありません。

コンピューターに任せることができる仕事は実は少なく、他方でコンピューターを管理、操作するという新たな仕事が必要となったことが理由の一つとして考えられる。

また「経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか」では

ITの影響が90年代後半まで目立った形でデータに現れなかった理由は、それがGPTであることだ。GPT(general-purpose technology)とは、様々な用途に使用しうる「一般的な汎用技術」のことである。GPTが経済全体に影響を与えるには、長い時間を要するのだ。

と分析している。新しい技術は利用する組織や社会の仕組みがそれに対応して初めて、効果が現れる。

ITが社会に影響を及ぼすようになった理由

情報社会学概論」で公文俊平は次のように述べている。

国際社会の特徴が「領土」の獲得をめぐる闘争にあり、産業社会の特徴が「商品」の生産と販売をめぐる競争にあるとすれば、情報社会の特徴は「通識(独占されず、広く分け合われる知識や情報)」の創造と通有をめぐる共働にあるということができる。

そして近代情報社会がもっぱらデジタル情報である通識の共創・通有のために必要とするインフラストラクチャーこそが「コンピュータ」と「インターネット」である。

1990年代後半になって、ITが社会に影響を与えると考えられるようになったのには、次のような環境の変化と技術の発達が理由であると考えられる。

  • オープンソースやフリーミアムの普及
  • コンピューターリテラシーの一般化
  • 十分な速度をもった通信インフラの整備と通信費の低価格化
  • 十分な処理能力をもったサーバーやPCの登場と普及
  • 標準的な規格や技術(HTMLやDNSなど)、通信プロトコル(TCP/IPなど)の策定と普及

ITバブルとその後の社会

いわゆる「ITバブル(情報・通信産業の急激な発展と、それに投じられた過剰な投資によってもたらされた株式市場のバブル現象)」を経て、「情報」を取り扱う環境や技術はより積極的な変化を求められた。

ITバブルの影響

  • 電話会社や汎用コンピューターメーカーなど旧態の情報関連産業が弱体化
  • より高速な通信網の敷設
  • 携帯端末の急速な普及
  • 途上国などでのITインフラの整備
  • プログラミングなど知的作業の国外外注が可能に

ITバブル後に見られた社会の変化

ITが社会に与えるメリットやコストが明らかになると、ITが力を持つ社会は拡大していった。

  • 経済物理学の発展
  • 「情報化社会(=脱工業化社会)」への劇的なシフト
  • Google、Amazon、Apple、IBM、Facebookなど先端IT関連企業の躍進
  • 「エジプト騒乱」に代表される、中東諸国における旧政治体制の崩壊

参考

記事のデータ

文責IDIA.JP
公開日2011年3月4日
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