ロングテールと情報デザイン

商品売り上げの状況をグラフ化する際、縦軸を販売数量、横軸を商品の種類として販売数量順に並べると「べき乗則」に従い、あまり売れない商品が尻尾のように長く伸びる。これを「ロングテール」といい、「売れない商品がヒット商品よりも多い」こと、またそのニッチな商品が新たなビジネスの可能性を持っていることをいう。
ロングテール概要
ロングテールの条件
- 生産、流通、在庫のコストを大幅に下げる
- 商品の種類を増やし、かつそれらを効率よく紹介する
以上の条件をみたすことができれば、ニッチ市場(ロングテール・ビジネス)を発展させることができる。
ロングテール・ビジネスの担い手
ロングテール・ビジネスの担い手は3つに大別できるが、それぞれの機能や役割を兼ねている場合が多い。
生産者(プロデューサー)
ブログやSNSの普及によりだれにでも情報の発信が可能になり、消費者は同時に生産者にもなった。またこれまで大規模な販路を持てなかったプロ、セミプロがビジネスの可能性を手に入れた。
集積者(アグリゲーター)
Amazon.comやeBay、iTunes Storeのように、ヒット商品からニッチ商品まで多様な商品を集め、販売する。「ヒット商品」意外を取り扱うことがポイントである。
紹介者(フィルター)
GoogleやYahoo!などの検索エンジンやソーシャルブックマーク、Flickrなど。需要と供給の一致をサポートする。
ロングテールで発展しそうなビジネス例
データとして扱うことができる商品
複製コスト、流通コスト、在庫コストが低い。
- 映画・動画・音楽
- 書籍・コミック・辞書
- ゲーム
- 広告
種類が沢山あったり、カスタムオーダーできる商品
多様化している趣味嗜好に対応できる。
- 医薬品
- 食品・飲料など
- 洋服・靴など
商品価格に対する流通コストの割合が低い商品
流通コストをほぼゼロとみなすことができる。
- 貴金属
- アンティーク
- 芸術品
BtoCの大規模な市場が存在しない商品
体系的なデータベースに意義がある。
- 古本
- 中古車
検索ツールの提供
多数ある商品の中から目的の商品を探す必要があるロングテール・ビジネスでは「情報のSN比」が低くなる。そのため、適切な検索ツールの提供が必須である。
「前置(プレ)フィルター」と「後置(ポスト)フィルター」
「何を市場に送り出すのか」を決める「前置フィルター(予測)」と、レコメンデーションや検索技術などによる「後置フィルター(測定)」によってフィルタリングされる。
前置フィルター
前置フィルターはその情報についての権威や、コンシェルジュ的役割を担う者によって行われる。前置フィルターはロングテール・ビジネスではあまり重要視されず、すべての商品を多くのバリエーションで提供することが望ましい。
後置フィルター
一旦市場に商品が提供された後、ユーザーの利用履歴や他のユーザーのレビューなどを利用して行われる。検索技術も重要視される。よりパーソナライズされたレコメンデーション機能がロングテール・ビジネスを活性化する。
ロングテール・ビジネスのポイント
- 在庫をたくさん集めるか、ゼロにする
- 集中管理できる大規模な倉庫を保有するか、デジタルの在庫をもつ
- ユーザーに仕事をしてもらう
- ユーザーの集合知を上手に利用する
- 流通手段を増やす
- 特にデジタルデータとして扱える商品では提供形態をできる限り多様にする
- 消費形態を増やす
- 音楽では曲単位で、本では章単位で、など購入方法のバリエーションを増やす
- 価格を変動させる
- オークション方式での値付けや、複数購入時の割引を実施する
- 情報を公開する
- 人気ランキングやレビューなど、信頼感を高め検索に役立つ情報を公開する
- どんな商品も切り捨てない
- 前置フィルターを機能させず、すべてを提供し、ユーザーに選ばせる
- 市場に整理を委ねる
- 選別やタクソノミー(分類)は市場の集合知に任せる
- 無料提供を行う
- 視聴や機能制限版の提供などを積極的に行う
ロングテールと情報デザイン
ロングテール・ビジネスを支えるのはITによる検索技術である。あふれる情報の中から希望の商品やサービスを見つけ出すのを手伝うことができれば、「売れない商品」を「売れる商品」に変えることができる。
個人が使うことのできる時間やお金の総量は大きく変化しない。したがって「自分が希望する情報(商品)」に「短い時間で手軽に」接触することができるように、情報の提供者は工夫する必要がある。
参考
記事のデータ
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公開日 | 2011年4月19日 |
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