UXデザイン

「UXデザイン」を理解するために、その定義と範囲について考察した。「UXデザイン入門 ソフトウェア&サービスのユーザーエクスペリエンスを実現するプロセスと手法」から抜粋して加筆。
UXデザインとは
UXデザインとは、製品やサービスを作る際に用いる手法のひとつ。ユーザー体験(User Experience)をデザイン(Design)すること。ITにおいては、ユーザーに満足してもらえるユーザーインターフェース(UI)とインタラクション(対話操作)をデザインすることを指す場合が多い。
「デザイン」という言葉のとらえ方
一般に、日常会話での「デザイン」は「ビジュアルデザイン」や「グラフィックデザイン」を指すことが多い。一方、英語での「design」は「設計」に近い概念であり、何を作るかを着手前にプランする事である。近年では国内でも同じ用法で「デザイン」や「デザイナー」という言葉を用いる場面が増えている。
UXデザインを様々な視点で定義する
プロトタイプの制作
UXデザインとは、実装前にデザイン調査を行いプロトタイプを制作するプロセスを指す。ITにおいては、インタラクションデザインやユーザーエクスペリエンスアーキテクチャとほぼ同義で扱われる事が多い。
ISOによる定義
ISO(国際標準化機構、International Organization for Standardization)はUXデザインを「製品、サービス、環境との対話操作の結果による、あるいはそれによって予期される、ユーザーの感動、信念、好み、振る舞い、成果のすべて」と定義している。
UXデザインの系譜による定義
HCI(Human Computer Interaction) | ユーザビリティー、ISO9241-210 | UXデザイン |
---|---|---|
工業デザイン | エルゴノミクス、ユーザー中心設計 | |
マーケティング | ペルソナ | |
Web2.0 | インタラクションデザイン | |
認知科学 | ユーザーエクスペリエンス |
UXデザインではないもの
ビジュアルデザインやグラフィックデザインのみに注力することや、対話操作のガイドラインやテンプレートを作成することはUXデザインではない。また、HTML5、Swift、Silverlight、Flashなどの技術は狭義のUXデザインを具現化する「手段」であり、UXデザインそのものではない。開発者がユーザーを理解し、それに基づいて正しくデザインしない限り優れたUXを提供することはできない。
UXデザインの価値、現実と課題
UXデザインの価値
- ユーザーにとっての価値
- 混乱する事無く効率的にゴールにたどり着く
- 顧客にとっての価値
- ユーザーの生産性の向上、トレーニング費用の削減、サポート費用の削減
- 開発者にとっての価値
- ソフトウェアやサービスの競争力を高められる、ユーザーが使用する際の問題を起こりにくくする
UXデザインの現実と課題
- コストと時間がかかるので、多くのプロジェクトではUXデザインを取り入れることができない
- 多くのプロジェクトでUXデザインが要件化されていない
- 多くのプロジェクトはウォーターフォール的であるため、UXデザインを取り入れられない
- 実際のほとんどのプロジェクトではデザイナーの経験からペルソナやシナリオを作りがちである
UXデザインの手法
製品、サービスを構成する要件
- 技術要件(アーキテクト、プログラマー)
- ビジネス要件(経営者、企画)
- ユーザー要件(UXデザイン)
UXデザインのプロセス
- 1:デザイン調査 ユーザーの観察、振る舞いとゴールに焦点を当てモデル化
- 2:ユーザーモデリング ペルソナ(想定ユーザーの共有)とシナリオ(調査データのコンテクストの維持)の作成
- 3:ストーリーボード ユーザーの脳内モデルにそってゴールを達成するステップを表現
- 4:スケッチとプロトタイプ 情報、UI、インタラクションデザイン
- 5:ユーザビリティテスト 製品、サービスに焦点を当てたユーザー調査
参考
記事のデータ
文責 | |
---|---|
公開日 | 2014年2月4日 |
カテゴリー | |
タグ | おすすめ/ビジュアルデザイン/フィードバック/ユーザビリティ/ユーザーエクスペリエンス/情報を伝える/技術と手法/歴史/用語 |
関連する記事 |